このブログは同名の書籍「研修医はじめの一歩」(リブロ・サイエンス発行)から、日記部分だけを抜粋してお届けしています。

この物語はフィクションです。


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医師を志す主人公・山際悟史のもとに届いた、亡き父(山際  薫)の研修医日記。

その日記を読みながら悟史の頭に浮かぶ、臨床研修上の数々の疑問。

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 今日は、いやいや、正確には「今日も」か、怒られた一日だった。
 昨夜、先週退院した胃癌術後の山口さんが調子が悪くて、救急受診し、腸閉塞の診断で入院になっていた。俺がサマリーを書いていなかったので、当直の先生がなんだかよくわからず苦労したみたいだった。しまった。軽く注意された。がくっ。(124)

 次は、入院患者さん全員の「安静度」の入力がめちゃくちゃだった。というか、「安静度」の入力があることをはじめて知った。(125)

 佐貫さんに注意されながら、「だって、誰も教えてくれなかったんだ!!」と喉まで出かかったけどやめた。もう学生ではないのだし、聞かなかった俺が悪いのだと思ったからだ。

 最近、特に給料をもらってから、自分の中で研修に対する意識が変わってきている気がした。積極的とは少し違うのだけど、なんか医師としての自覚ができてきているような気がした。言い過ぎか……。(126)

 近藤社長がまたやらかした。微熱が出て、データが少し動いたので、遺残膿瘍チェックでCTを午後に入れた。造影CTだったので昼ご飯を中止し「検査待ち食」を入力しておいた。(127)

 それなのに、自分でコンビニで「とんかつ弁当」を買って食べてしまったらしい。「近藤さん。検査ですよ」と部屋に看護師が呼びに行ったら、ちょうどカツを口の中に入れているところだったそうだ。

 その話を聞き、申し訳ないけど笑ってしまった。だけど、それからが大変で、せっかく朝の忙しいときに、電話して無理して緊急CTを入れてもらったのに、できなくなるので検査室に電話して謝ったり、いつから撮影可能か放射線科の先生に聞いたり、忙しかった。

 別に俺が悪いわけではないのに各方面ですみませんでしたと謝りまくった。日勤帯の最後にCTを撮影してもらい膿瘍はなく大丈夫だったのが幸いか。「社長〜。頼みますよ」

 虫垂癌の藤井さんの手術は、無事に終わった。お腹を開けると、なんかゼリーのようなものがあってびっくりしたけど、勉強していた「腹膜偽粘膜腫」だと、すぐに理解できた。100万人に1人くらいの珍しい疾患だった。

 癌が腹腔内にこぼれているので、かなり進行した状態だった。40歳の働き盛りの藤井さんの人生にとって、衝撃的な出来事だった。幼い子供がいることも知っていた。

 でも、心の片隅に、珍しい疾患に出会えて喜んでいる自分もいた。一体俺はどうなっているのか。なんだか、人の不幸を喜んでいるようで自分自身が嫌になった。

 「そんな、藤井さんの病気を治してあげなきゃいけないし、治ることに協力ができるのが医者だよ」と、悩む俺に池内先生が言ってくれた。
 そして、医者は患者さんの病気を治しているのではなく、治ろうとしている患者さんの手伝いをしているのにすぎないということ。治ろうとするのは、患者さん自身だということ。だから、治ろうとしない患者さんを医者が治すことは難しいということを、語ってくれた。

 全力で藤井さんの病気を治す手伝いをしようと思った。





疑問
悟史の疑問124
研修中に大切なことは「失敗から何を学ぶのか」ということです。
 研修医は仕事の種類もいろいろあるし、最初のうちは、うまくいかないことだらけだろうな。それは研修医だったら仕方のないことなのかな?


悟史の疑問125
「安静度」とは何か?
 「安静度」とはなんだろう? 安静にする度合いなの?


悟史の疑問126
プロであることの自覚が必要です。もう実習の延長ではありません。
 親父すごいな。一か月で、変わってきてるよ。「もう学生ではない」早くそんな気持ちになってみたいな。


悟史の疑問127
「検査待ち食」とは何か?
 「検査待ち食」とはどんな食事なのかな? 待つ食事??




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