このブログは同名の書籍「研修医はじめの一歩」(リブロ・サイエンス発行)から、日記部分だけを抜粋してお届けしています。

この物語はフィクションです。


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医師を志す主人公・山際悟史のもとに届いた、亡き父(山際  薫)の研修医日記。

その日記を読みながら悟史の頭に浮かぶ、臨床研修上の数々の疑問。

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 学会発表をするための第一歩は「抄録」というものを書くことだった。「しょうろく」といっても小学校6年生ではない。当たり前か。

 「抄録」の意味を辞書で調べると、「原文から必要な部分だけを書き抜くこと。抜き書き」と書かれている。要は、症例のことをまとめた文章だ。わずか400文字で患者さんの主訴から現症、入院後経過まですべてを端的にまとめなければならないらしい。
 学会の主催者が、それをみて、発表していいかどうかを決めるそうだ。さながら、駆け出し作家の出版社への出版依頼原稿のようなものか。
 図書館でコピーしてきた資料の中に、他の人が書いた抄録があったので、それを参考にして書いてみた。(166)

 カンファレンスの準備の資料みたいになってしまったが、なんとか書けたので、池内先生にチェックしてもらった。そうしたらなんと「先生、この症例は非常に珍しいので、発表だけじゃもったいないから論文にしたら?」と言われた。

 「論文??? なんじゃそれ?」

 論文にしたらと言われても、どうやって書くんだ?(167)
 戸惑っている俺になおも池内先生は畳みかけるようにおっしゃった。

 「病院の別館には研究室があるから、研究したかったらできるよ」

 「???」(168)

 脇で聞いていた木月先生は興味を持って聞いていたが、論文も研究も今の俺には無縁そうだったので、とりあえず、そのノウハウだけ聞いておいた。何か俺には別世界のような話であった。

 休日の午後に病棟で一人で仕事をしていると、病棟のナースステーションによく電話がかかってくる。特に今日はその数が多かった。何回か出てみると、その多くは緊急入院のお願いであったので、たぶん病院内でうちの病棟が一番、今ベッドが空いているようだった。(169)

 あまりに電話が頻回にかかってきて仕事にならないので、研修医室でやることにした。(170)

 休日の午後なのでさすがに研修医室には誰もいなかった。寂しく仕事をして、夕食くらいは良いものをと思ったが、またコンビニ弁当になってしまった。ミーのことを思いながら今日は一人、寂しく寝た。






疑問
悟史の疑問166
学会の「抄録」とは何か?
 抄録の書き方はどのようにすればいいのかな?
 抄録を書いた後は具体的にどうすればいいのだろうか?


悟史の疑問167
論文は書けるのか?
 親父の言うとおりだ。論文??? なんじゃそれ?
 論文にしたらと言われても、どうやって書くのだ?


悟史の疑問168
研究はできるのか?
 研究? 研究とは動物実験とかのことかな?


悟史の疑問169
病棟で鳴った電話は取るべきか?
 病棟にかかってきた電話は研修医が出た方がいいの?


悟史の疑問170
病棟以外に研修医の居場所はあるのか?
 病棟以外に研修医が落ち着いていられる場所はどこになるんだろう?
 研修医室とはどんなものなのかな?





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